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不動産鑑定士・福嶋千恵子が聞く「関西の不動産・建設業界人」⑨=日商エステム・浅井悦裕代表取締役社長

2018.02.26

近畿圏の分譲マンション供給戸数で上位10位内にランクする日商エステム(大阪市中央区)。大阪、京都、兵庫、名古屋、東京、福岡、沖縄を中心に1991年の事業開始から年間500-700戸の供給を継続できる秘訣は何か。マンション業界の将来動向についても浅井悦裕代表取締役社長に聞いた。

①

――少子化ですが、年間7万戸のマンションが新規供給され、価格も高値で推移しています。今後の市況についてどのようにお考えでしょうか。

「当社は投資用マンションと実需用マンションの両方を手掛けています。投資用はまだしも、実需用は人口減少でいずれ行き詰まるのが見えています。当社では新築分譲だけではなく、マンション管理、リフォーム、中古マンション売買仲介、賃貸管理・募集に至るまで、お客様にトータルサービスを提供し、他社との差別化を図っています」

「他社でも同じく、『転勤などで一時的に不要となったマンションは賃貸に出せばよい』と簡単に言いますが、賃借人募集まで面倒をみるデベロッパーはほとんどありません。お客様は自分で賃貸会社に行き、募集手続きをしなければなりません。賃借人が決まるまで時間がかかることもあり、個人オーナーにとっては大変な手間と時間がかかります。その点、当社は担当の営業マンに電話を1本かけていただくだけで、グループ会社のエステムプランニングが募集・管理を行います。このように差別化を図っていますが、ブランド力はまだまだ足りないと感じています」

――ブランド力を高めるための戦略を教えてください。

「ブランド力は商品の付加価値を高め、お客様満足度を上げることに尽きると思っています。マンションの付加価値を高める方法は、最新の住設機器、ドラム式ゴミステーション、コンシェルジュの導入など様々あるでしょう。しかし、導入・ランニングコストが高くなり過ぎるものは結局、マンション価格に上乗せされるため、お客様の満足度は低下します。当社はコストが高くなり過ぎないように工夫したサービスに力を入れています。例えば、コンシェルジュは、住民が最も出入りする朝と夕方から夜11時までの時間帯に絞ったり、管理をグループ会社で行い、各戸の前にゴミを出しておけば、管理人が朝ゴミ収集するなど、自前で出来ることは自前でするというようにコストをかけないなど工夫しています」

②

「ハード面では、間取りをもっとも重視しています。住んでからの満足度は共用部の充実度より、何と言っても専有部分の間取りに左右されます。間口が狭く細長い部屋より、間口が広く正方形に近い部屋のほうが断然住みやすく、中古で売る時も値崩れせず、賃料も高く設定できます。土地情報を入手してからマンション用地取得決定までの時間が短いことが当社の強みの一つですが、その段階から間取りを重視し、間口が広い住戸がしっかりと取れない土地形状であれば、立地が良くても取得しません」

「マンションは分譲して終わりではなく、一度お客様になった方とは一生お付き合いが続きます。マンションに住んでおられる間はもちろん、売却されても、投資用や次の住まいを買われる時に戻ってきていただきたい。そのために、普段から住民の声を聞いている管理担当者の会議を月1回開き、受け持っているマンションの問題を皆で共有・検討し、解決策を講じるなど、選ばれる会社になる努力を心がけています」

――今後の目標は。

「現在、日商エステムグループの売上高が約460億円、経常利益が約42億円です。近い目標として売上高500億円、経常利益50億円にしたいと思っていますが、無理な拡大路線は取りません。金融緩和の現在、資金調達は順調で、株式上場を目指しておらず、無理な株主還元を図る必要がないためです。その分、社員に還元し、モチベーションを高めていきたいですね」

③

――投資用マンションの営業というと社員には厳しいノルマが課されるというイメージなのですが、今はそうではないのでしょうか。

「名前は言えませんが、某大手デベロッパー出身の独立系デベロッパーは体育会系の猛烈営業をしてきました(笑)。私も今から20年前、入社した頃は朝も昼も夜も関係なく営業していました。古き良き昭和の流れを汲む営業スタイルでした。平成も30年となった今、昔のようなスタイルではなくなりましたが、積み上げてきたノウハウが当社の一番の強みです」

「実は私は入社してから、初契約を取るのが同期の中で一番遅かったんです。初めて買ってもらったのは担当していたエリアの高校の教師だったのを今でも覚えています。ただ単に話をしているだけでは誰も買ってくれません。半年近く、様々なお客様にお会いしていくうちに、相手の声のトーンなどから、何となく聞いてくれるタイミングに当たったのか、そうでないのかが分かるようになりました。こちらがマンションを売りたくても、相手はそんなことは関係ありませんよね。相手の話を『おっしゃるとおりですね』と聞いているうちに、相手に買いたい気持ちがあるかどうか分かってきました。熱心としつこさの違いを学びました」

――同じ営業方法でも営業成績を上げることができる人とできない人がいますね。その違いは何でしょうか。

「明確に何歳までに課長になろうというような目標を持っている人は、その目標が利己的なものであろうと、強いと思います。逆に漠然とした目標しか持っていない人は、自分でハードルを上げて、そのハードルがクリアできないため自信を失い、辞めていくことが多い。なので、若い人に言いたいことは、何でもいいので目標を持って欲しいということです。間違っていれば修正すればいいのです」

④

「私の場合、大学卒業時に大きな仕事に携わりたいと考え、不動産業界に入ることは決めていました。単位の関係からその年に卒業できると思っていなかったので、卒業間際に就職活動をし、たまたま面接に通った当社に入社することになりました。30歳までに起業するという目標がありましたので、29歳の時に起業しようとしたのですが、当時の社長に『君は突っ走りがちなので、2割の重しがあったほうがいい』と言われ、社内に残ることになり、その後社長を拝命することになりました。起業するという目標は成りませんでしたが、その目標があったため、ここまで来れましたし、今ではさらにそれ以上の重責を担うことになったと思います」

――最後に好きな言葉を教えてください。

「『高い目標を持ち続けることが人生を切り拓く力となる』です。目標を持つだけでしたら、誰でもできる。持ち続けることが肝です。今の若い人達は私達の時代とは全く違うのですから、1言って10を知れというのは無理な注文です。しかし、若い世代は真面目で、10言えば10はできる。この点を怠ると伸びない。上の世代の人間の責任は重いですし、また若い世代がどうのというのではなく、逆に我々世代が試されている時代なのです」

(あさい・よしひろ)1998年3月大阪学院大学法学部卒、同年4月株式会社日商エステム入社、2000年10月同社営業課長、01年同社次長、04年同社取締役部長、13年同社代表取締役社長に就任(現在に至る)。大阪市出身、43歳。

【インタビュー後記】

営業の強い不動産会社の社長ということで、アクの強い人物像を想像していましたが、お会いすると、想像とは異なり、地に足を付けたしっかりとした強さを持つリーダーでした。同社の営業力をもってすれば、今以上に販売戸数を拡大し、他の地方、海外展開も可能であると思われますが、やみくもに規模を追求せず、顧客満足度と社員満足度を高めることを目標とされており、その堅実さが頼もしく思われました。ブランド力は発展途上とおっしゃっていましたが、同社のコアなファンが多い理由が分かるインタビューでした。

【筆者略歴】

福嶋千恵子写真

福嶋 千恵子(ふくしま・ちえこ)1994年3月早稲田大学政治経済学部卒、2003年から不動産鑑定業界に従事。14年に輝づき不動産鑑定(大阪市北区)を設立、代表に就任。不動産鑑定の実績は1000件以上。「得意分野は相続や複雑な案件。お客様のニーズにオーダーメイドでお応えします」

2018.02.26

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