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不動産鑑定士・福嶋千恵子が聞く「関西の不動産・建設業界人」⑪=リバー産業・河啓一社長

2018.09.10

植栽が個性的なリバーガーデンシリーズを中心に、特色のある大規模なマンションを供給し、「なんばセントラルプラザ リバーガーデン」(大阪市浪速区)が分譲マンションでは全国初の「都市のオアシス2018」にも選ばれたリバー産業(大阪府岸和田市)。河啓一代表取締役社長に、今後のマンション業界の展望を聞いた。

①

――緑の多い特色のあるマンションを供給されていますが、コンセプトはどこから生まれたのか、そこに至るまでの経緯を教えてください。

「1963年に建設業として個人開業し、その後公共事業・土木事業の傍ら、住宅開発分譲も手掛けることとなり、97年からはマンション分譲(リバーガーデンシリーズ)も行っています。この間には昭和のバブル、そしてその崩壊、リーマンショックもありました。銀行からお金を借りて住宅開発をしていたので、売れなくなると借金を返せない。周囲の会社はほとんど倒産する中、会社を一度畳んで再建したほうがたやすかったと思いますが、『河啓一』の名前の一部を付けた『リバー産業』という会社を絶対に潰したくなかった。とにかく借金を返すため、ケチと言われようが削れるところは削って、違法なこと以外は何でもやりました(笑)」

「起業当時から助けてもらったのは、岸高(岸和田高等学校)の先輩方です。銀行・役所・各方面の先輩方に随分とお世話になりました。岸和田は古い街なので、地縁を非常に大切にするんですよ」

②

「そういう人情豊かで緑の多い街で育ち、苦しい時に助けてもらったため、恩返ししていかないといけない。マンション作りの中でできないか、それが『緑』という発想の原点かもしれません。また、私はギリシャ神話や歴史が好きで、『自然回帰』という考えがあるからでしょう。自然が1番、人間は2番、その次にようやく都市設計がくる。自然を排除し、建物ありきで人間をそれに合わせるという考えは自然の摂理にかなっていないんです」

【リバーガーデンシティ】

③

――最近ではテレビで御社のマンションが「近隣住民が避難できるマンション」としても取り上げられました。

「『防災』も同じ恩返しの精神です。2011年分譲の『三国の川辺の森 リバーガーデン』(大阪市淀川区)は新築分譲マンションとして日本初の『津波避難ビル』に登録されました。万が一南海トラフ地震のような地震が起きて、最大5.5㍍の津波が来ても、『リバーガーデン福島 木漏れ日の丘』(大阪市福島区)は、3階以上の共用部分に4500人の近隣住民が避難でき、数日間救出を待てるという設備を備えています。とにかく子供・女性・年配者など弱者の命を救う。行政に頼るだけではダメで、民間の力で防災をしないといけない。我々マンション業者は点でしかないですが、点がつらなり、そのうち線となり、面にしたいと思っています」

【「リバーガーデン福島 木漏れ日の丘」の外観完成予想図】

④

――大阪は特に緑が少なく、防災意識もそれほど高くない地域ですが、御社のコンセプトは広がりますか。

「緑と一言に言っても、単に木を植える面積を増やすだけではなく、見せたいところを見せ、見せたくないもの(機械設備・コンクリートなど)を消すように、立体的に大小様々な常緑樹・縁石・小山などを配置することで、目に見える緑を増やす『緑視率』を重視したガーデン造りをしています。これは限られたマンション敷地内にできるだけ緑を多くする工夫で、16年には『リバーガーデン福島 木漏れ日の丘』が年間成約戸数で日本一になったとおり、お客様に徐々に認知されていると実感しています」

「大阪はインバウンド(訪日外国人旅行)で賑わっていますが、一時的な観光のインバウンドだけでは街の本当の活力にはなりません。一度旅行に来て買い物をして、ゴチャゴチャした汚い街というだけの印象では、リピーターも見込めず、経済効果はそのうち減っていくでしょう。人口が増えているアメリカのポートランドや、日本の武蔵小杉(川崎市)、京都の中心部などに共通する点は、緑が多く、情緒があり、観光客も多いということです。大阪がそのような活力のある街になるためには、まず緑を多くし、住民にも観光客にも魅力のある街にならなければなりません。アジア人は緑が好きではないと言われますが、実はそんなことはありません。中国人が旅行で重視するキーワードは上位から「リゾート」、「美食」、「自然探索」、「アウトドア」とほとんど自然が占めています。普段身の回りに自然が少ないため、逆にそれを求める志向が強いのかもしれません」

⑤

「インバウンドだけではダメだと言いましたが、人口・購買力の点でこれからはアジアの時代です。魅力ある街づくりをし、観光客に何度も来てもらい、大阪を好きになってもらい、マンションも買ってもらう(笑)。当社では中国人社員が中堅に成長しており、中国の方にもたくさん買ってもらっています」

――転機は。

「子供の頃はずっと戦争でした。その頃の教育は男子たるもの文武両道に秀でるべきというものでした。武のほうは、柔道部、その後ボディビルに進み、全国で2位になり、一応極めましたが、文のほうはそうはいかなかった。一流の大学でないと行きたくないと意地を張り、結局受験は失敗し、大学には進みませんでした。私にはそういう欠点がありますが、受験で失敗して惨めな思いをしたことが契機になったと思います。そのまま大学に行き、エリート官僚やサラリーマンになっていたら、逆境になった時、倒れていたかもしれません。商売をやろうとは思ってもみなかった私にとって、そういう意味では欠点が最大の味方になりました」

――今後の展望は。生涯現役ですか。

「今までも『緑視率』などビジョンは素晴らしかったが、社員全員に浸透しているとは言い難かった。今は第一次計画9年の最後の年で、社内にエネルギーは貯めました。次の第二次計画の9年でお客様目線ファーストの仕事を充実していく予定です。私もその頃までは頑張るつもりです(笑)。そして、大阪で培ったノウハウを持って、海外へ出ていきます。儲からなくても良い。自分たちだけ良しとするのは冷たい国になり、活力がなくなります。隣のアジア諸国は若く、市場が溢れています。そういう国々に『リバースタイル』を持っていき、一緒に発展していくことを考えています」

――若い人へメッセージを。

「今ほど恵まれている時代はありません。夢・感性を持って自分に忠実に生きて欲しい。行き過ぎはいけませんが、家が欲しい、出世したいというような欲望も人のパワーとなる大切なものです。『情けは人のためならず』といいますが、正にそのとおり。私も昔は自己中心的な塊でしたが、人のためにすることが、結果自分のためになるということがこの年になって分かってきました。『自分に正直に生きる』、この言葉を若い人達に贈りたいと思います」

(かわ・けいいち)1956年大阪府立岸和田高等学校卒、63年リバー建設・個人創業、66年リバー産業株式会社設立・代表取締役就任(現在に至る)。岸和田市出身、80歳。

【インタビュー後記】

災害が起きた際に真っ先に被害を受ける子供・女性・年配者といった弱者の命をまず救う、緑が少ない大阪に少しでも緑を増やす。夢物語のようにも聞こえますが、夢のまま終わらせず、実現させ、次世代・海外にもつなげている河社長。なにわのシンドラーのリストと呼ばれる所以が納得された情熱溢れるインタビューでした。インタビュー直後には「こどもの貧困対策の推進」への寄附に対して大阪市長から感謝状が贈られる贈呈式が行われ、こちらも取材させていただきました。

こどもの貧困対策の推進に1000万円を寄附/吉村大阪市長から感謝状/リバー産業」(2018年8月31日掲載)

2018.09.10

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